ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

ラストがなあ… 映画感想『ミッション:8ミニッツ』※ネタバレ

 ミッション:8ミニッツを観たので感想。

 8分間のタイムリープを繰り返しながら列車爆破テロの犯人を見つけ出す映画。

 

 2011年の映画なので、後発の類型作品を多々見ているため少し物足りない。

 テロ事件の死者の記憶をもとに事件現場とその場にいる人間を再現した仮想世界へと、瀕死の軍人の意識を送り込んで調査させる(その間被験者の軍人は死ねずに仮想世界に閉じ込められる)という地獄みたいな人権無視設定は痛快なスリラーに見えてかなり怖い世界観だなあと思う。軍人を使いつぶせるだけ使いつぶそうというグロさは戦争ものの映画でよく題材になるし、人間を使うシステムというのは古典的なSFにあるネタなのだけれど、何度みてもこういうのは、現実のおぞましさが増すばかりの昨今きついよなあと。

 列車を舞台にするのって、やっぱり熱くなるなと思う。何度も目的地に着かないまま砕ける電車が目的地に着く姿だけでグっと来てしまう。知らない人だけで構築される列車が、ループの中で主人公にとって人生を持つ人間に代わり、主人公がシステムを作った軍部とは異なる視点を持つにいたる姿もまた列車が舞台なればこそ。人権無視マシーンで人間を消費する軍部に振り回されていた主人公が、他者を笑って死のうとする姿は泣ける。

 最後は、たとえ死ぬとしても、無意味だとして、最後まで世界を良くしようとする姿勢には意味があるという姿勢は美しい。

 だからこそラストの蛇足感がすごい。ラスト、主人公は意識を移送された世界で幸せに生きていくのだけれど、この主人公の意識が入った人間は主人公ではない。となると彼は「一人の人間を犠牲に回る地獄の機械」から脱出して、一人の人間を犠牲にした自分の幸せを手に入れるわけで、これだとラストのストップモーションの感動が薄れちゃうなあと蛇足に思ってしまった。