ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

いい実写化だった 映画感想『ゴールデンカムイ』※ネタバレ

 ゴールデンカムイの実写版を観たので感想。

 なお、筆者は原作既読。

 以下、結末までネタバレあり。

 

 とてもよかった。面白かった。いい実写化だった。つまんない邦画を観るのが趣味で漫画実写化映画を観る人は行っても求めるものは観られない。

 大満足。

 原作20話くらいまでを二時間でまとめたシナリオが見事で、少しずつ改変しつつ原作の面白いところはしっかり残して、破綻なくまとめあげている。シナリオが巧い。

 PG12で原作そのままの映像化がとても無理なのは予想していたが、思っていたよりちゃんと血がでていたところもよかった。鶴見はちゃんと指を食いちぎるし、杉元の頬に団子の串も刺す。熊に襲われて顔の皮がべろり、もやる(ちなみにここの演出がホラー映画でいい)。さすがに内蔵は隠している。願わくばこういった大人気大ヒット漫画がR-15で原作そのままのグロもOKな状態で映像化しても十分な興行収入が見込めるくらい売れるような世の中になってほしいものだけれど。

 

 アクションもいい。旅順は正直、砲撃の轟音は痺れたもののどうしても小さい世界に見えてしまうのだけれど、一対一の戦闘はどこもかなりいい。杉元対尾形のナイフ戦は楽しいし、ソリの上の攻防では横を走る馬を蹴ってソリへ戻るアクションとか見どころが多い。でもやっぱりアクションシーンの背景のはめ込みCGなんかは出来がよろしくなくて違和感すごい。

 

 キャストもいい。アシリパさんはアニメの芝居そのまんまで、杉元もいい。特にいいのは鶴見中尉で、こちらはアニメとは異なる芝居でありながら、かなりぶっとんだ鶴見を実写で成立させる芝居に仕立てている。超いい。あとキャストの見た目を原作に寄せているとこもよくて、尾形なんて出番はあまりないけれどかなりそのまんま。舘ひろしは実写版ハガレンと同じくとにかくカッコいいので様になる。白石もそのまんまなんだけれど、白石の芝居はあまり好みではなかった。いかにも邦画の面白キャラ芝居って感じで、福田雄一的な、どうにも苦手だ。

 

 あと熊が怖く描かれていたのも好感で、原作で語られる通り巨体でありながら気づかれることなく接近する演出がしっかりしておりマジで怖い。

 北海道グルメもけっこうしっかり。脳みそはないけれど、カワウソ頭丸ごと煮込みはある。飯食ってほっこりした直後に鶴見たちが出るシーンにつなぐ緩急がまたいい。

 料理シーンでチタタプが当然出てくるのだけれど、そこで原作にないセリフが付け足されている。原作においてチタタプは「チタタプ」といいながらみんなで肉を叩くルールだと伝えられる(そしてそれがシリーズ全体を通すひとつのキーになる)のだけれど、これは野田先生が考えたアレンジで、実際のチタタプには言いながら肉を叩くというルールはない。原作も監修はついているから意図して作中の重要な演出として創作されたのだろうと思う。このチタタプのルールについては創作であることが明かされない(ファンブックかなんかにだけ書いてある)。それは演出上極めて重要な嘘だからだろうと思う。で、それをカバーするためにこの映画ではアシリパさんが「うちではそうしている」という形のセリフを言っている。これはたぶん、原作を読んでいてもこういった背景がわからなければ意味がわからない追加セリフだろうと思う。

 当然、漫画なんだから歴史通りである必要はない。入れた意図は観客に過ぎない私にはわからない。もしかすると歴史への敬意と継承というものが極めて重要な意味を持つ本作がベストセラーになった結果としてアイヌについての誤った文化を継承してしまうことに、作り手の誰かが居心地の悪さを感じたのかもしれないし、それとも映画のアイヌ文化監修の方がアイデアを出したのかもしれないし、野田先生が頼んだのかもしれない。それはわからない。

 しかしアイヌ差別を平然と行う国会議員がいるバカげた現在において、文化への敬意が大きな意味を持つ本作がこういったセリフの追加で文化へのリスペクトを見せるのは良いことなんじゃなかろうかと私は思う。

 

 最後は勃起や医者やキロちゃんといった面々が顔出しだけして終わる。かなり力作だし、人気原作でこのくらいちゃんと作られていれば続編はできるんじゃないだろうか。ヒットしてほしいと思う。WOWWOW制作だからもしかすると、ドラマで続くのかも。

 

 正直あんまり期待していなかったせいもあって、めちゃくちゃ楽しかった。