ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

アニメ感想 『マルドゥック・スクランブル 圧縮・燃焼・排気』

 冲方丁原作の小説をアニメ映画化したもの。

 原作は若いころに読んだ。最近マルドゥック・アノニマスを読もうと思い、そこでヴェロシティを途中までしか読んでいないことを思い出して、おさらいがてら未見だったアニメ版を鑑賞。

 原作者かつシナリオライターとしてもキャリアのある冲方丁がシナリオを担当しているだけあって、1時間尺の映画3本では難しい原作を綺麗にまとめている。作者がシナリオやって上手くいかない例もあるけれど、これは間違いなく大成功パターン。

 改めて観ると裁判の重要な人物とその護衛の関係、追う男との過去の因縁、カジノで逆転(かっこいいディーラー付き)、変態、悲しい幕引き、とアメリカ映画的な展開がてんこ盛り。若いころは全く映画を観なかったので、気づかなかった。

 

 各キャストの芝居がいいので、非常に楽しめる。とても合っている。メインキャラがみんな被害者で、自分より上位にあったものからの抑圧によってゆがみ、そのゆがみが誰かへ牙をむく負の連鎖。その逃れられない「支配された記憶」から抜け出す術は、たしかにこうした悲惨な物語の中にしか描けない美しい答えだった。

 

 性加害の被害者でありそのトラウマとそこからの解放が大きな意味を持つ本作で、その主人公がお色気担当みたいな衣装ややたら裸で描かれるのは、なんというか、演出面において作品をきちんと汲み取ってなくねえかとは思った。それって製作者の男たちという圧倒的な上位者が彼女の性を利用しているわけでしょ、んで鑑賞者のおっさん(私だ)がそれを消費するというのは、なんというかこの映画の悲劇の根っこにある醜悪な存在側の価値観なわけで、そういった意味では全体的に演出面でなんだかなと思う部分はあった。