ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

失礼ながら意外と面白かった。 映画感想『科捜研の女―劇場版―』

 なんとなくつまんなくてもいいから普段観ない映画を観てみようと思い鑑賞。

 人気ドラマシリーズ科捜研の女の劇場版。相棒なんかはかなり映画が作られているけれど、1999年からブランクを入れつつずっと続いている本作の映画化は初。

 そもそもテレビドラマの映画化はファン向けで、本作の熱心な視聴者ってわけじゃない人間が観て楽しめなくても致し方ないのだけれど、これが意外と面白かった。

 結末までネタバレあり。

 

 

 世界中の科学者が連続自殺する謎の事件が発生。毒物や持病は検出されず、周囲に人もいないため事件か事故か判然としない。主人公のマリコは自殺者が全て細菌学者であること、死の直前に何者かと電話していたこと、一様に頭痛を訴え助けを求めていたことから、殺人事件の可能性を疑う。被害者の着衣から検出された液体から、マリコはある研究者にたどり着く。

 

 という内容。劇場版ということで世界に拡がっているが、事件は基本的に京都のマリコたちのいる科捜研で進行する。動機とかもまあ普通で、テレビスペシャルみたいな内容。

 代りに何が劇場版サイズに豪華かといえば、ロケーションと登場人物の数。後者はべつにいいとして(ファンは嬉しいと思う)、前者はけっこういい。紅葉の綺麗な神社は絶景だし、細菌研究所は不思議な造形の建物で面白い。研究施設はやたら狭いが、中央にドーム(あれで菌を閉じ込められるのだろうか)があってそこだけ光が注ぐ舞台劇っぽい嘘くさい美術は、あれはあれで好きだ。 いかにもカルト教団として描かれる研究所の役者は演技過剰だが、そこんとこは沢口靖子の芝居に寄せると全体的にフィクション感は高まると思う。

 それと演出面はなかなかいいところがあって、最初の一人目が自殺するシーンはけっこうビックリする。川井憲次の壮大な音楽で煽られての飛び降り自殺者の姿は、紅葉、和傘と凝っていて映像的に楽しい。あと土門警部補が規則違反でつめられる会議では画面に対して人物を横向きに大きく映すという変わった演出があり、ここんところぎょっとする感じでよかった。

 事件の捜査とその結末は、ある高慢な科学者と実直な科学者の対決というムードが常に中心軸にあり、面白い。本当に失礼ながら、ここのドラマの流れと結末は意外と面白かった。

 福山潤が出るのだが、マジでちょい役。なんというか声優のタレント化が進んだ結果、役者であるはずの声優がタレントのゲスト出演みたいに使われるのは、なんだかなーと思うばかり。

 

 こういう「意外とけっこうおもしろかったなあ」に出会うと、傑作映画だろうと楽しみに観に行って素晴らしい映画に出会うのとはまた違う楽しさがある。