ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

アニメ感想『雲のように風のように』※ネタバレ

テレビアニメ『雲のように風のように』を観たので感想。

 監督は鳥海永行、キャラデザは近藤勝也と有名どころ。原作は昨年亡くなった酒見賢一の『後宮小説』。酒見賢一は大変著名な作家だが、私は墨攻しか知らなかった。

 

 原作は中国史や哲学を基盤にしながら国も歴史も人物も全て架空、存在しない中国の歴史書に則って描かれたフィクション、というこれぞファンタジーという作りの小説になっている。ただその偽史のディテールを積み上げる面白さは小説ならではの構造、演出なので、アニメでは絵としての世界観作りで楽しませてくれる。

 天真爛漫(といえば聞こえがいいが礼儀を教わってないだけじゃない?)な銀河のキャラ性が面白くて、ハーレムに入るのにカラっとしていて悲壮感皆無、後宮もので主人公に何の打算もないのって珍しい。天真爛漫な少女が大人になる物語で、それが教育によるもの、というのはかなり現代的。「最後まで若く溌溂としていた」というのは少女性への幻想で、そこんところは昔の男の理想的物語って感じはある。王位の簒奪者は学がなく粗野な山賊上がりで、彼らと銀河率いる後宮の女性たちという対比は子供向けアニメとしてかなりわかりやすく作られている印象。

 昔のジブリ的な可愛いキャラの世界観ながらそこにある血なまぐささや人間臭さははっきりと演出されていて、その辺りの演出のバランスもいい。

 大砲一発でトンネルが大破壊されるところのカタルシスは最高で、それまでの空気感からすると少しズレた、監督のフェティッシュのようにも思えるがだからいいんじゃないか。

 しかし全体的にさらりと見易く描かれてしまっていて、原作小説を読みたくなる。