ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

アイドルは可愛いけれどとにかくドラマがない。 アニメ感想『アイドルマスター シャイニーカラーズ 第3章』※ネタバレ

 2024年4月から公開予定のテレビアニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』劇場先行公開の第3章を観ました。ネタバレがありますし、全く好意的ではない感想なのでご注意を。

 劇場で観る予定のある方やシャニアニに興味のある方は絶対に読まないでください。先入観なしでアニメを観てほしい。

 

 

 

 以下、ネタバレあり。

 

 正直、映画館で特別料金払って観るほど面白くなかったです。

 劇場で全3章全て観た感想としては、1章は1話目こそイマイチだがキャラの描き方が丁寧で各ユニット回は楽しい、2章はW.I.N.Gの描き方がよくてかなり面白い、3章は一番観ていて退屈だった。3章を観た結果としては、シャニマスを知らない人がこのアニメを観てシャニマスファンになるかと言うとかなり厳しいのではないかと思った。

 いいところはもちろんある。キャラが可愛い。キャラの一つ一つの動作が丁寧で、例えばダンスの練習ではアイドルごとに動きに個性を作っている。動作が大きい果穂に、踊りながらも不安そうに他の人のダンスをみている甜花、そういった細かいところの演出がキャラをより可愛く見せる。炊飯器に念を送る凛世もかわいい。あとライブの観客が黒髪男ばっかりでアルストロメリアのMC時に野太い絶叫が聞こえるのなんか無駄に現実っぽくて笑える。

 とはいえ服装に全然差分がないのはさすがにゲームの立ち絵じゃないんだし違和感があるし(着物姿の凛世をいっぱい出せ)、アップのシーンが多いけれど3Dモデルのせいかのっぺりして見える。ライブの観客の作画クオリティについてはかなり低くて、ゲームか? ってくらい。ライブが楽しく描けていないのはかなり問題だと思う。ライブを現実の1stライブを模したものにする、という構造は確かに感動を抱く。現実の声優の皆さん、そしてゲームの始まりと今までの歴史が、アニメ内のアイドルたちの頑張りと重なって、さらにアニメの彼女たちの未来が続くことが見える。でもいかんせんライブが面白くない。アニメで、3Dで、という媒体のわりにカメラワークは普通、というか現実のライブ映像みたいでアニメとして観ると新鮮味も驚きもなくて面白くない(つまらなくもない)。現実っぽいことされても、これアニメだしなあと思うし、シャニマスやってる人が言う「アイドルの実在感」ってそういうことじゃないんじゃないか。

 アイドルアニメのライブシーンってそれこそが看板で、1クールのラストとなれば力の入ったものを期待してしまうのだけれど、驚くような演出もないしカメラワークもなかった。過去のアイマスアニメはどれもかなり気合いれたライブシーンを作るけれど、それらと比較してはっきり弱いと思う。回想をかなり入れているあたり、リソースが足りなかったのだろうか。

 わざわざ劇場公開するんだから劇場サイズで観てインパクトのあるラストのライブが来るのだろうと期待してしまっていたというのも、がっかりした要因だと思う。テレビアニメで観ていたら、まあこんなもんかと思うのかもしれない。

 

 しかしそれ以上に3章最大の問題は、とにかくドラマがないことだと思う。アイマスシリーズのアニメ化の中で一番ドラマがないんじゃなかろうか。3章だけで4話もあるのにアイドル個々人にフォーカスする物語もないし、各ユニットについての掘り下げは2章までで終わっているのでそちらの物語もない。アンティーカのファン感謝祭を基にしたドラマが起こりそうな気配があったが、波乱は起きずに流れる。真乃のセンターになるかどうかというドラマもさらっと終わって、それ以降は合同ライブまで大きな問題が起きない。甜花が泣いたりちょこっと何か起きたりはするけど、意図的に平板にしているとしか思えないくらい本当に起伏が薄い。1クールの終盤四話という普通なら加速度的に盛り上がるパートであるはずなのに眠かった。

 アイマス、デレマス、U149と観てきた(申し訳ないがMとミリは未見)が、どれもキャラやPの掘り下げは積極的に行ってドラマを作ってきた。そりゃそうした結果ストレスフルな展開が起きてファンから反発を招いた回もあったけれど、しかし1クールの物語で終盤に最高の盛り上がりを作ろうとすれば一度グっと下げる話が入るのは必然だと思う。そこへの批判を恐れて、ではそういった下がるシーンをやめればストレスのない楽しいドラマになるかと言えば、それはストーリーはあるが感情を動かすフックや展開、つまりはドラマがないものが出来上がるだけで面白くない。ワクワクもドキドキもなくて、ただゆったりと成功へ進むのを眺めるだけだ。

 たしかにキャラ萌えは間違いなくこのアニメにはある。アイドルアニメにおいてそれはライブパートより重要かもしれない。しかしそれらドラマを経ないキャラ萌えはアニメの外側、つまりゲームプレーヤーの記憶にその根拠を持つキャラ萌えであって、それはこのアニメの作り上げた感情やキャラではない。シャニマスがいいキャラを積み上げてきたってだけだ。「いや違う、ファン向けアニメだからいいんだよ、キャラが可愛いと思えるシーンだけあればいいんだ」という人はそれでいいのだろうし、そういう感想の人たちを否定するつもりは全くない。でも、アニメ的な工夫や面白さを捨てることを「実在感」とか「現実」と呼ぶのはやめてほしいし、それを「シャニマスが現実を見せようとしている」とめちゃくちゃな譲歩をして擁護するのもなんだかなあと思う。そんなファン側で楽しむ工夫を考えないとならない信心を試すようなアニメは私はつまらないと思う。

 前半はきちんとドラマを構築していたわけだけれど、どうにも後半がダメだとやっぱりアニメ全体がダメな気がしてしまう。

 少なくとも私にとってシャニマスの良さって歌とシナリオだ。歌とシナリオによって深堀されるアイドルたちが好きでシャニマスをやっている私にとって、そのシャニマスのアニメ化でここまでなんにもない話を観ることになるとは思わなかった。

 あとラストにストレイライトとノクチルが出るのだけれど、このちょっとロリっぽいキャラデザにのぺっとしたモデルで作られた浅倉透はあんまり魅力的には見えなかった。

 シャニマスが好きなだけにけっこうショックが大きくて、初日に劇場で観たあとにこの長文を書いて寝かせて、しばらく過去のアイマスアニメのライブシーンを観ていた。やっぱり過去作のライブの方が何倍も面白い。

 ゲームはこれからも続けるしCDは買うしライブBDも買うけど、テレビ放送で観返すのは放クラ回とW.I.N.Gのところくらいかなあと思う。以上。