ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

画面の芝居が凄い 映画感想『search/サーチ』 ※ネタバレ

 search/サーチを観たので感想を。結末までネタバレありですので、未見の方はご注意ください。

 

 韓国系アメリカ人の親子。母を亡くしてから父と娘はぎくしゃくして家庭は上手く行っていない。ある日、娘が行方不明になる。父は娘を見つけるために、彼女のSNSアカウントやPCに保存されたアドレス帳から娘の足跡を追いかけるが、思い描いていた娘とはことなる本当の娘の姿に直面する。担当警察官と連携した父は、家を出た娘が金を引き出しある場所にいったことを突き止めるが……という感じの、PC画面のみで映画が構成されるスリラー。

 ワンシチュエーションの映画だと監視カメラ映像をつなぐとか色々あるけれど、画面のみでやるのは珍しい。世界初ではないらしい。こういうので思い出すのはギルティ。

 PC画面上のみで繰り広げられるスリラーというアイデア一本勝負って感じの映画なのだが、その勝負に真っ向から挑んでうまいこと作られており、面白かった。

 とにかく演出が巧くて、こういうワンシチュエーションもの&登場人物少ないとなるとどうしても発生する無理のあるシーンとかもテンポや音楽でさっと乗り切っている。

 PC画面で事件を追うというのもかなり考え抜かれていて、FaceTimeでの通話で俳優の芝居がかなりの場面で写せるし、相手とチャットやリモート会話をしながらググったりニュース記事を開いたりSNSを追いかけたりと情報の多面展開ができる。これがかなり有効で、説明セリフとか説明過去回想の代わりにブラウザを並列表示することでコンパクトに情報提示できる効果が抜群。しかもブラウザを動かす速度や、マウスの動きでその画面を見ている主人公の感情が見えてくる。

 この画面の芝居がすごくうまくて、マウスの動きやブラウザの速度で主人公の感情が伝わってくる。しかし人間の表情より情報量が薄いのでフォローのために音楽での感情の盛り上げが過剰なところはある。

 SNSが色々出てくるわりに各サービスの説明を全然していないのもよくて、とにかくテンポがいい。状況説明についても、主人公が状況を理解する過程と同じものを観客が見ることで、説明過多になっていない。こういった変則的なドラマで説明過多にしない情報量の制御はすげえ。

 父親が直情径行かつ暴走気味で、娘には隠した生活があり、と来るとこれは「渇き」みたいなどろどろしたドラマになっていくのか? という予想に反して物語は真っすぐのいい話だった。

 致し方ないけれど犯人の正体は、登場人物が少ないからそうなるよなという感じで、種明かしはあんまり驚きがないのだけれど、代わりに主人公が犯人に気づいてから逮捕→真相解明までのテンポのすっげえ早いこと。このシャープな切れ味は素晴らしい。

 巧い映画を観た。2も観ないとな。