ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

前半が好きでラストはがっかり。 ドラマ感想 『何かおかしい』

 ドラマ「何かおかしい」を観ました。以下、感想。ネタバレありです。

 雨穴がオモコロでやって、さらにYouTubeでもバズった人気企画をドラマ化。面白かったのだが、しかしドラマ化する過程でわかりやすくしたり無理やりワンシチュエーションドラマに置き換えたことで発生する無理なところは無視できないなと思った。

 それと、YouTubeの語りなんかだと気にならない「そんなことわざわざやるか?」みたいな部分が、ドラマにして人が演じるとなんか違和感が凄かったな。芝居下手な人も多いし。

 

 以下、各話感想。

・第1話 おしゃべり人形

 遊園地の閉園式典のラジオ中継中、不気味な仮面をつけた人々が何故か遊園地にずらりと並ぶ姿が映る。さらにTwitter上では、ラジオの感想と共に奇妙なハッシュタグが盛り上がっており……。

 スタジオ内も中継ロケも全部ネットで映像配信している人気ラジオで、ドラマはラジオではなく映像の方を見ている人たちの視点で進む。しかも謎解きと物語の推進はかなりSNSのPC画面側に比重が置かれる。という設定から、雨穴でドラマを作る、しかしYouTubeと同じスタイルにせずドラマにする。そして短期間で一気撮り。という無理難題へのシナリオライターの苦心が見える。その結果、全体的に異常に説明的。

 不気味な姿の人々が、遊園地を楽しんでいる人々の中棒立ちでカメラを見ている。という映像の怖さは非常にいい。スマイル的な。風に煽られて主犯の顔がちらちら見える演出もすっげえかっこいい。最高。

 しかし地元の遊園地の閉園式典にラジオしか来ないって、どんなしょぼしょぼ施設だったんだ。

 あと公開処刑の協力者に一組子連れがおり、子供を殺された親の復讐殺人生配信に子連れで来るやつ怖すぎるなと思った。この親たちがたぶんシリーズ最高の異常者。

 

・第2話 虹色のハンカチ

 人身事故を起こしたアイドルがラジオにゲスト出演。様々な色のハンカチが庭につるされ虹色のフラッグのように連なる不思議な家の話をしたアイドルに番組は興味を持ち、ラジオの中継が虹色のハンカチの家に凸する。その家の主にはある秘密があって……。

 虹色のハンカチの家、という鮮やかなビジュアルの撮り方がよくて、すげえ不気味でいい。老婆の正体は交通事故加害者が出所するのを待ち構えて、被害者の事故時の衣服で作ったハンカチを渡して精神を追いつめることで交通事故を無くそうとする狂人。他の加害者にはハンカチを渡すとき説明していたのにアイドルにはしていないのはご都合。

 徹頭徹尾老婆のやっていることに意味がなくて、犯人をより追い詰めれば事故が減るなんてわけがない(再犯による事故より新規事故の方が圧倒的に多い)し、最終的には政治家の交通事故を弁護したやり手弁護士の家族を轢き殺す倒錯なんてマジで意味がわからない。この完全にぶっ壊れている感じが大変面白いスーパークレイジー老婆のキャラ設定が素敵。

 ブラウザで見てほしい情報にぐっとカメラがよるだけでなく、必要な情報が浮き上がったりもして、非常にクドイ。いったい誰の視点でいまその映像になっているのかわからない部分が多い。このてのドラマはそうならざるをえないのはわかるけれど、やっぱり違和感になるよなあ。

 前回の殺人中継が全く番組に影響してなさそうなところが怖い。

 

・第3話 その口、ふさいでやるよ

 ドSキャラで人気の俳優がドラマに出演。彼のドSキャラのきっかけになった投稿の主と生中継が繋がり、彼女は突然届いた不思議な画像と、その画像にかかわる昔の2chでのある出来事を話す。二年前に起きたあるスレッドの凸で何が起きたのか。

 ザ・クイズショーみたいな話。

 ヒントがアスキーアートを文章化して文字化けさせて暗号にして、と手が込んでいる。こういうのは雨穴さんのYouTubeなら気にならないが、ドラマだと浮くネタだと思う。ドSセリフがただの悪行の記録だった、というオチはとっても好き。ほんと、このオチすっげえ好きなんだよな。ギャグみたいなんだけど。

 ラストの実はこの人も……がやりすぎ感がある。

 

・第4話 いろはにほへと

 大人気子役だった娘が行方不明になり、そのニュースバリューで人気女優になった母親がラジオへゲスト出演。行方不明になった娘が10年たって突如視聴者から発見される。母娘の再会を生配信中に実行する企画が始まるが、母親には不審なところがあり……。

 構成作家が能動的に動き始める。この話でここまでの追及する⇔されるの間に挟まって観測者であるラジオ、という体裁が崩れる。しかしそれによって、ドラマに緊張感が増して楽しい。

 さらっと出てくる「長尺の生放送はラジオだけ」というワード、このドラマの違和感をフォローする見事なセリフだと思う。

 いろは歌ってホラー作家大好きなアイテムだけど、最初に使い始めたのって誰なんだろう。いつ頃からのネタなんだろうか。

 この手のドラマでよくあるブラウザがどんどん増えて表示されるやつ、昔の個人ブログにあったお手製簡単疑似ウイルス体験みたいで、笑える。

 Twitterの反応で即座にイラストが描かれて投稿されているのがリアルで、そこだけ解像度が高いのも面白かった。

 

・第5話 儀式

 ラジオに届いたリスナーからのメール。故郷の小さな村で不定期開催される謎の祭りを取材してほしいと依頼が舞い込み、祭事で使用する不気味なお面の写真が届く。ラジオを聞いていた歴史学者のお墨付きを貰った構成作家はリポーターを祭りへ向かわせるが……。

 殺人生中継に立ち会っても辞めない小野寺が怖い。歴史学者Twitterプロフィールの解像度が高い。軽薄な構成作家が鼻出しマスクなのも解像度が高い。

 ミッドサマーからこっち、奇怪な祭りに生贄が引き寄せられるモノが大定番。鉄板ネタになった。よくよく考えるとかなり恐ろしい、には遠く、ずっとおかしい。というかラジオ局がバカすぎる展開。

 なぜヤバい企みを公開アカで実況するのか。

 「口を開けたらお面が落ちてしまうからおかしい」って、銜え面ってそもそもそういうものでは。

 最後のパーソナリティを小手さんにして、演技力が必要なパートをこなすのは巧いやりかた。

 

・最終話 隅の婆様

 謎の儀式でリポーターが行方不明になった番組は大炎上で存亡の危機に(遅くね?)。破れかぶれでリスナー参加企画を始めると、奇妙なメールが届いて……

 やっぱりこういう企画で縦軸のドラマを入れるとうまくいかないというか、とびきりつまらないエピソードだった。

 呪いのJK軍団のリーダーの芝居が自然ととても巧い。

 呪いに見せかけた炎上祭りって、一番雑だった。わかりますよ。小さな違和感に気付くと真相が見える物語、という雨穴さんの企画のパンチラインをそのまま物語全体の構造にしたっていうのは。そしてそれは社会がいろいろなものから目をそらして悪くなっている日本社会の問題点への指摘でもある、というのもわかる。

 でもだから最後はテキトーな話でいいってことにはならんでしょう。なんか、ただの制作者の愚痴大会と、ラジオファンの雑な愚痴と、適当な社会批判。そして〆セリフの伏線回収したぜ感。がっかりすぎるオチだった。単純に面白くない。

 前半二つのビジュアルイメージの良さがすっげえよくて、そこから先の縦軸のドラマが進み始めるといまいちだった。狂った構成作家ってキャラもテレビドラマに異常な頻度で出てくるニヤニヤサイコキャラみたいであんまりおもしろくなかった。

 最後が本当にがっくり来たな。

 全体的に先日観た「この動画は再生できません」のが上手かった。