ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

考察系ホラードラマのいい変化球 ドラマ感想『この動画は再生できません』※ネタバレ

 TVKで放送されていたテレビドラマ。コント師かが屋が主演。テレビ神奈川はなんでこんなにかが屋が好きなんだろうか。

 9月から第二シーズンが始まるそうで、その前にと視聴。非常に面白かった。

 以下、ネタバレ。

 

 本作は「廃墟に肝試しに入った女子高生が次々と幽霊に殺される呪いのインスタストーリー」「怪談Youtuberが生配信中に行方不明になった恐怖の配信」「アパートの内見に行ったら幽霊が現れて恋人が行方不明になった男の録った記録映像」「何故か即座に配信停止になった企業PR動画」と不穏な気配漂うホラー映像が流れ、後半になるとかが屋が演じるホラーライターと編集マンの二人がその映像を検証するという、変わった形式のミステリーになっている。

 舞台はホラーDVDシリーズ(ほん呪みたいなの)を編集する編集室。そこへ投稿された一般人からの恐怖映像を二人が観て、編集マンはその仕事がら映像の細かな違和感に気付く。そして一見ただのホラー映像だったものが、実は別の秘密が隠れていることが明かされていき……というドラマ。

 この設定が面白くて、ホラーとして観られる前半から、後半は編集マンがその意図を解き明かす謎解き。これの効果は色々あって、アイディアの勝利。

 「何かおかしい」の大バズりからどかっと色々な番組がやっている、考察系ホラー。たいていがその「よく見ると恐怖が見えてくる」状況を作るために考察のヒントがわざとらしい。なんでかと言えば「考察する」「視聴者が能動的に答えを見つける」を実現するためにヒントは明確化されないといけないから。どうしても、ホラーの映画やドラマの恐怖演出より恐怖が削がれる。また、「何かおかしい」では、成立させるためにラジオ局なのに映像が流れて、推理役の推理の進捗以上に画面での説明が多い。こういったリアリティを崩す違和感が増してしまう。

 それらは、しかしジャンルとして観客が受け入れている違和感だから作り手もあまり気にしていない(もしくは諦めている)ように見える。

 しかし本作はこの設定にしているおかげで、それらをけっこうクリアできている。探偵役が編集マンだから、わかりやすくしすぎる必要がない。だからかなりホラー映像集的な、ほん呪とか低予算ホラーみたいな映像にできる。これはかなり大きな発明だと思う。また、映像編集によって素人が怖い映像を作っている、というのも、現代においては違和感はない。

 そしてホラーDVDを作っている仕事上、映像を見るパートにも違和感はない。

 いい発明、考察系の物語のいい変化球だなと感心しきり。真相でいうと、3本目の幽霊と手をつないで去るラストの爽快感が良かった。4本目は微妙。

 かが屋の二人の温度感が、前半後半のいいギャップだった。

 冒頭「1%の本物に出会いたくて投稿映像を見ている」という話しから最終話は絶対に本物の心霊映像が出て終わりだろう、と思ったら、まさかのオチ。後半の推理パートと同じ構造がシリーズのオチになるこの構成はしゃれててよかった。

 舞台設定が見事に前半の怖い話パートを生かして、そして怖い話映像を制作するという構造が(怖い話系DVDあるあるみたいなものが)そのままオチにつながる、パッケージ構造が非常に巧く決まっていた。この後みた「何かおかしい」がそこんとこ外しているように思えたので、余計にそう思う。

 しかしこのオチで、どうやってシーズン2をやるんだろう。