ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

意外と好きだった 映画感想『ゴースト・イン・ザ・シェル』

 攻殻機動隊アメリカでの実写版映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』を観たので感想を書きます。

 

 士郎正宗の漫画をハリウッド映画化、という趣は薄く、押井守の映画2作と神山健治版アニメを混ぜて作った実写映画という感じ。構図等かなり押井守攻殻機動隊から持って来ているところもあり、アニメ攻殻機動隊の名シーンをそのまんま実写化しているところもままあり、リスペクトを感じるのだが、そのまんま過ぎて面白味は薄い部分も多い。よくも悪くも非常にオタクっぽい引用の仕方だと思うが、それを嫌とは思えない。

 しかし実写としての映像にすることによる質感の差、特に実写的カメラの映像をアニメに取り込んだ押井の画面つくりがそのまま実写になる際の差異みたいなものは観ていて楽しいところがある。あとビジュアル、美術セット、色使い、部屋や建物の造形にCGで作られた風景などけっこう綺麗で観ていて退屈しない。というかそのあたりのゴージャスさはやっぱり金かけた映画って感じでとってもよかったと思う。

 あからさまに押井の構図を多用しているのだけれど、押井守の実写映画で押井の特徴的な構図を無理やり実写にするためにCG使うと安っぽいのだけど、さすがにハリウッドだと自然な実景に見えてそこが解決しており、そんなとこも面白い。あとビートたけしの戦闘シーンはアウトレイジから引用したみたいでオタクの作った映画という感じ。この監督は押井守と同じくらい北野武が好きなのか、バトーを脇に置いて美味しいところを荒巻が持っていく。

 政府と大企業の癒着によって隠されたある出来事が素子とからみあうというのはSACシリーズっぽいし、そんなにアニメを踏みにじるような作品ではない。ちょっとナイーブというか、いかにもなハリウッド映画っぽさがクゼとのやり取りとか黒幕や担当医の行動にあって、そこんとこは微妙だったな。あとラスト、そいつぶっ殺していいのか? 色々聞きださないといけないこといっぱいない?

 人形使いとクゼという少佐と関わる二つの存在を混ぜてある種の元ネタありきのアレンジで作り出すマッシュアップのロマンスは好きだし、白人のヨハンソンが少佐を演じる意味性みたいなところも取り込んでいるのは個人的に好感が持てて、アジア系でやると本当にただ傑作アニメを実写にしただけになっていたわけでその工夫はけっこう驚きがあっていい。それと機械化され記憶すら操れるところまで来たテクノロジーで何が人間なのか、という部分についての答え「己は何者か」と「自分の意志で決定すること」とするのはアメリカっぽい。

 全体的に楽しめるところが多かった。私は好きだぞ、これ。

 そんなに嫌な実写化じゃなかった。