ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

終わらない暴力の螺旋の最後の救い 映画感想『ジョン・ウィック:コンセクエンス』※ネタバレ

 ジョン・ウィック:コンセクエンス(Chapter4)を観たので感想を書きます。

 結末までネタバレがありますのでご注意ください。

 

 素晴らしかった。アクションに次ぐアクション、2h49mの長めの上映時間ずっと戦い続けている。しかもどのアクションも工夫満載、シチュエーション・敵・武器・撮り方とあの手この手で楽しませてくれる。アクションが好きでジョン・ウィックが好きなら観るしかないし、観て損もない。

 どのアクションもよいが、ジョンのヌンチャク使いと長ーい階段落ち、相手を走行中の車に放り投げる交通事故アクション、そして上から撮って進行するドラゴンブレス弾での戦闘シーンが最高だった。終始苦い顔のキアヌがいい。これだけの長い映画でこれだけのバリエーションのアクションが可能というのは感嘆するほかない。

 そのうえ今回は真田広之ドニー・イェンまで登場。真田広之は大阪コンチネンタルを仕切るジョンの旧友・コウジを演じ、ドニーイェンはジョンとコウジの旧友で引退していた盲目の殺し屋ケインを演じる。この二人がまーカッコいい。

 コウジ率いるニンジャ軍団はいかにもジョン・ウィック世界のニンジャといった感じだが、刀の使い方にるろうに剣心実写版っぽさもあり面白い。リナ・サワヤマ演じるコウジの娘アキラのアクションも漫画っぽくてかなりよかったな。主席連合側が巨体の兵士だらけなのも対比ができていてよかった。

 終始強者として君臨し続けるケインはもう最高。盲目で仕込み杖というモロに座頭市(鉄火場で蕎麦食ったりもする)なケインのアクションは盲目っぽさもありつつ、咏春拳アクションや定番のチェーンパンチもあり、ガンアクションもバッチリ(銃を構えてその上に仕込み杖を重ねる先頭姿勢が最高)と全方位に隙が無い。娘を人質に取られて引退の身から旧友との死闘に駆り立てられる苦しみと、絶対強者然とした悠然とした姿とのギャップもいい。大阪コンチネンタルでは旧友コウジを慮ってかなるべく殺さずに殴り飛ばしていたり、アクションにおける細かい感情表現もイイ感じ。ラストのジョンとの決闘は、驚くほど美しい。

 さらに今回は新キャラ・トラッカー(ミスター・ノーバディ)が登場。犬使いの殺し屋で、無名で主席連合にも認知されていないが実力は抜群。主席より早くジョンの居場所を見つけ出し(方法は不明)、銃も打撃もめちゃ強い。そして愛犬は車に轢かれても無傷という「人間が死んでもいいが犬が死ぬのは嫌」という怖い価値観の観客のために作られた無敵犬。彼がある種の第三勢力として時にジョンを助け、時にジョンを狙う、物語を引っ掻き回す役を請け負う。このトラッカーのキャラメイクだけが雑で、この映画唯一の欠点だと思う。ノーバディを名乗り、どんな人間で、どんな目的で金を欲しているのか全くわからない本当に「誰なんだよお前」で最後まで行く。そのくせシナリオ上の役割だけは明確で「ジョンが死なず、ケインの格を落とさず物語をかきまわす」「ジョン達のような殺しの連鎖に入る入り口に立ち、ジョンとの出会いを通して入り口を通らずにある種の『コンセクエンス』へのルートを抜けた人」ということなのだが、本当に役割だけが浮いていてキャラにドラマがない。なんかわからんが強くて、イベントとイベントの結節点にいて、最後は傍観者、という本当にイベントの動きには関与するがドラマには関与しないという、なんとかならなかったのかというキャラ。他が濃い分より浮いているというか。

 

 ラストシーンも素晴らしかった。ついに自由を得たジョン・ウィックが倒れ、墓が映されて終わる。死と報復の連鎖で旧友も殺したジョンの逃避行の果ては、その連鎖の終結・旧友の解放・そして自身の自由。アウトレイジもそうだけど暴力の果てはそのレーンから抜け出すしかない。全ての果ての報復を受けた優しく容赦のない最強の殺し屋の物語の終結。素晴らしいラストシーンだった。

 と思ったらジョン・ウィックChapter5をやるらしい。

 とするとこの明確に死を描かないラストシーンが怪しくなってくる。

 エンドロール後のアキラがケインを殺そうとするシーケンスからジョン・ウィック5が始まって、横から現れたジョンが彼女を止める。娘に花を渡し泣き崩れるケイン。なぜジョンが生きているのか。実はあの墓はウィンストンの策で(劇中、キングが生前に墓を用意したという会話は伏線)、ジョンを戦いから解放するために死んだことにしていたのだ。彼の新たな生活は……

 みたいなChapter5だったら最悪だな。と、本作のラストを気に入った人間としては思う次第。5も絶対観に行くけれど、もしそんな始まりだったら退席するな、私は。もしかするとジョン・ウィックという伝説が消えたあとのあの殺し屋界に訪れる騒乱の時代を描くのかもしれないし、トラッカーが二代目ジョン・ウィックになるのかもしれないけど。どっちにせよ続編は絶対見ます。

 大満足。