ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

映画感想『イングロリアス・バスターズ』

 イングロリアス・バスターズ

 タランティーノ。面白い。わりと長めの映画だけれど、それでも強引に話を詰め込んでいて散らかっているような気がするが、その強引さもまた楽しい。ナチのかっこよさってナチがビジュアル戦略ゆえ、それに乗っかってしまっているナチスものの映画に対して、かっこよさみたいな部分に乗っからないという作りにしているのは意外とあまり無いタイプのつくり方。バスターズの暴れっぷりもいいし、復讐に燃えるショシャナが美しい。ランダの悪役造形が素晴らしく。バスターズやショシャナがかなり暴力的に行動するのに対し、国家・軍・親衛隊と大きな背景を持つランダは常に穏やかで明確な脅しや威嚇は行わない。彼は常に相手に対等に接して穏やかに会話を進めている……ように見えて、常に自分主導で会話を進めている、という細やかな造形を見事に演じてナチかっこよバトルみたいにならない作品ゆえにあまりに魅力的に映りすぎている気もするが、それもラストシーンを観れば意図してそうだなと思う。ナチの制服はかっこいい。銃も暴力も映画もカッコいい。しかし何一つこの映画では残らない。全て負のモノ、死と痛みと恨みと、カッコよさに飲まれると地獄に続いている。

 フレデリックの、純朴っぽくていいやつっぽいが実のところ全然相手の気持ちを推し量れていないという描写の積み上げがラストに迎える結末のあっけなさもよかった。

 とにかくラストの映画館火災のすごさ。燃やして追い詰めた上に撃ち殺すという容赦のなさ。イーライ・ロスの顔の濃さがまた加点になる。何もかも終わらせる炎と、全てを終わらせた煙に浮かび上がる死者の勝利の顔。すげーシーン。

 ギャグも楽しい。荒っぽいブラピがとにかく魅力的。彼のラストの道理の通し方が本当に素晴らしい。面白い映画だったなあ。マジで殺しも暴力も復讐もカッコいいけれど、でもそのカッコよさに飲まれるとロクなことがない。勝手にそういう戦争映画とは反戦映画である的なオチと解釈している。