うる星やつらではなく、2020年公開の本広克行監督の実写映画。低予算だが商業映画的なしがらみが薄い絶対監督主義を標榜する企画『シネマラボ』の作品。押井守が映画のために書いた『夢みる人』という本を原案として本広克行が作り変え、さらに脚本は完全な形にせず現場での即興劇で撮影を進めるという実験的な作品。
映研の部室で発見した古い脚本『夢みる人』。撮影済みのフィルムが喪失したその映画を完成させるべく、映研の面々は手探りで映画作りを始める……というのが基本的なストーリーライン。
劇中撮影される映画は完全に『うる星やつら2ビューティフル・ドリーマー』で、 学生映画予算でBDを実写化するという無茶な試みそのものがみていて結構楽しい。さらに随所で「なんでこんな絵になるんですか?」「台本通りです」「〇〇では?」と押井守のレイアウトへの疑問や適当な答えがでてくるところも俯瞰の面白さがある。
ずいしょでのそういった意図的な引用以外に見どころがないかというとんなことはなくて、モノ作りという学園祭と楽しい時間が永遠に続くことを願わざるを得ない状況、そして終わり、というものをBDの引用で作り上げることで、終わらない学園祭の延長戦のような 不思議な青春感があってよかった。
表現は誰かに引き継がれ、誰かの学園祭は次の誰かの学園祭へつながれていく。そういう面白さがある。
しかし低予算で何やってもいい状況でもさほどヘンテコなものにならないのは本広監督っぽいなあとも思う。この企画で撮られた押井守の「血ぃともだち」は本当に低予算でひどい作品だったし、かなり押井守だなあという作品だった。