ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

映画感想『特捜部Q 檻の中の女』

 デンマークの人気ミステリー小説『特捜部Q』の映画化第一作。

 頑固者で独断専行の結果大失態を犯し資料整理を担当する特捜部Qへ左遷された刑事カール。資料整理中に自殺として処理されていた女性議員ミレーデ失踪事件に違和感を抱いたカールは、助手のモサドと共に捜査を開始する。自殺と思われた事件の意外な真相は。

 という、かなりスタンダードな設定で、わりとどこの国でも類似のものがありそうなミステリー。そしてどこの国の小説でもそうだけど、スタンダードな設定でヒットしているものはそれだけ物語の強度が高い。非常に面白かった。

 

 やばい犯人とのチェイス、みたいな派手な作品ではなく、仲間を失い心を閉ざしたカールがもくもくと一つずつヒントを探して謎を明かしていく堅実なスタイルの推理もの。カールの捜査と並行してミレーデの過去や行動が描かれる。監禁されているミレーデの姿が状況の緊迫感を高めている。

 全体的に静かで落ち着いた雰囲気で進み、映像も冷たく重たい色味で統一されている。冷たく静謐な空気。北欧っぽいというと偏見だが。だからこそラストの二人の笑顔と共に曲が流れエンドロールに入るところはアガる。

 犯人の正体と過去が一気に明かされるシークエンスはセリフ一切なしで、ここがかなりいい。犯人の人生を一変させた事故、それを引き起こした少女の愚かすぎる行為、その事故を起点に二手にわかれてしまった少女と少年の人生、それを知った犯人の心に起きた波。美しい風景の中、死の前に雪の中を歩く少女がこれでもかと美しく撮られ、雪と死の中に浮かぶ真っ赤なワンピースの少女こそ彼にとっての「赤いドレスの女」だったと説明なしに突き付けてくる。頭のおかしい犯人の動機だなんだを口頭で説明されると萎える長くなるし、この演出は最高。というかこの物語を90分程度でシャープに説明しすぎず描いているのが素晴らしい手腕。

 部下を失い家族ともうまくいっていないカールによりそうアサドは、アラブ系の移民でイスラム教徒でデンマーク語が怪しい(これは日本人の私にはわからないけど、たぶんそう)上に特捜部Q配属前はスタンプ係だったにもかかわらず、正義に熱く優しく賢く献身的な人物で、いわゆるアメリカ映画のマジカル・ニグロ的な存在には見える。でもまあこの辺りはデンマークの移民事情わからんしなんとも。

 二人の友情がちらりと見えるのもキャラ萌えの観点からとてもいい。

 これはシリーズ追いたいなと思ったら、私が使っているU-NEXTには二作目のキジ殺しだけがない。なぜ二作目だけ配信しないんだU-NEXT。なんでそんな中途半端なことをするんだU-NEXT。