ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

映画は最高、吹替には疑問がある。 映画感想『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』

 すっげえ面白かった。

 もとになっているゲームは全く知らないのだけれど、全然問題なく楽しめる。種族や世界観についての説明セリフが全くないのだが、べたなファンタジーとして説明されなくてもわかりので全然問題ない。ゲーム的なネタもあるけれど、そこも説明なしで全然問題ない。なんでかといえば、D&Dを知らなくても、その影響下にある作品には知らず知らずに触れているからだろう。

 この説明せんでもわかるやろの精神で作られているおかげで、無駄な説明セリフが全然なくて非常にすっきりテンポよく楽しめる。

 テンポはギャグもよくて、一個一個のボケをサクサク進めていくからだれない。予告編を観たときに、つまんねえギャグ映画だななんて思っていたのだが、映画本編を観るとそのギャグが面白い。コメディの難しさがよくわかる予告編。

 主人公も旅の仲間もみんなちょっとダメなところがあって、そんな連中が一つになって戦っていく様はとってもいい。ベタな直球勝負で十分に感動できる腕の良さ。アクションもテンポもいいし、映像的にも工夫が多くていい。

 クリーチャーの造形や、非人間の種族の造形、画面にちょろっと写る生物なんかもどれもいいし、ドルイドの変身アクションの長い逃走シーンは非常に楽しい。

 娘に向き合えていない父、敵は子育てのすばらしさを「幼いものが自分を頼り自分の意のままになる快感」と語ったり、昨今流行りの家族問題についても描き方がまっすぐでよかった。

 ギャグはNPCキャラっぽい人が真っすぐ歩いてくとことかかなりよかったな。

 すかっと観られてずっと楽しい、これぞ娯楽アクションって感じでよかった。

 

 で、問題点は多く指摘されている日本公開用エンディングテーマで、これはひどい。全然あってないよくも思えない曲をラストに流されても困る。

 で、もう一個個人的に気に入らないのが吹替え版。

 声優はどれも上手いのだけれど、アニメの人気者を集めたときのキャスティングの、その声優の定番アニメキャラに似た役を配置して似たような芝居をさせる演出が非常にひっかかる。それってこの映画と全然関係ない話じゃん。

 それと途中、「死者を蘇らせて四回だけ質問できるので情報を聞き出す」シーンがあって、ここに神谷浩史森川智之をキャスティングしている。この「人気声優の無駄遣い(笑)」ってネタが私は大嫌いで、無駄遣いってそれに心血注いだ芝居する相手に失礼だし、その映画本編と無関係の価値観を持ち込むマーケティング的なノリ自体が「この映画を売るために無関係の日本の曲をタイアップさせよう」という批判されている事象と同根なんじゃないかと思っている。

 あと主演が武内駿輔さんなんだが、この芝居が非常にひっかかった。

 芝居はうまいし、面白い。なのだけど、その芝居が思いっきり山寺宏一になっている。声質が似ているから似て聞こえてしまうとかそういうことじゃなくて、コメディシーンのリアクションとか、語りかけ方とか、これは間違いなく意図して寄せているのではないか。若く人気のある役者がそんな物まねみたいなことする理由がわからない。

 山寺宏一はタレントとしても人気があって、物まねも上手い。武内さんも同じだ。だが山寺宏一は物まねみたいな芝居はしない。山寺宏一の芝居をする。そこは本当にオリジナルの芝居をしている。器用に真似て芝居するのはタレントの仕事なんじゃないか。

 こういう芝居をすると「やまちゃんかと思った、すごい」なんていう人もいるけれど、個性やオリジナリティを目指して研鑽している役者にそれのどこが誉め言葉なんだろうとずっと疑問でいる。

 しかもこういう芝居がいい芝居になると、外画において元の役者の芝居は脇になってしまうし、別の人気キャラ・過去の芝居の引用でよくなってしまうと、演劇のデータベース消費みたいなものになってしまって、それって新しい役者が存在する意義ってあるのかと思ってしまう。

 いや、下手ではなくて、映画を観ていてずっと楽しい芝居なのにこんなにうだうだ言うのは何故か自分でもよくわからない。

 昨今よく言われている「声優のタレント化」って何が問題なんだと私はずっと思っていて、昔から舞台俳優がアイドル人気が出て歌を出したり、演歌歌手が自分の公演で芝居をしたり、そんなことはあったわけでタレント化は文化としてそれらに並んだだけだろうと思っていた。しかし今回の演技の、その、器用なタレントのような芝居をみると、何かうまく説明はできないのだが、非常に違和感がある。これが拡大すると吹替のいい芝居の定義が変わってしまって自分の好きなものが消えていくような感覚。大げさだが。そんな感じ。