ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

変な映画は楽しい 映画感想『男女残酷物語/サソリ決戦』※ネタバレ

 男女残酷物語/サソリ決戦を観たので感想。

 すっげえ面白かった。

 

 あらすじ:女性の権利が拡大され科学が進歩し、このままでは世界から男が不要になり女だけの世界になってしまうと怯える狂気の男セイヤー。謎の慈善事業組織の大幹部である彼は、組織に勤める新人女性メアリーを拉致する。セイヤーはサディスティックな本性を露わにし、監禁したメアリーを凌辱する。だが、強靭な意思を持つメアリーはセイヤーの拷問に屈することなく、いつしか二人の関係に変化が訪れる。

 

 1969年のイタリア映画で、日本初公開の”新作”映画として上映されている。公式サイトには海外で近年この映画が発掘、発見され人気らしい。YouTubeにオフィシャルなサントラがアップロードされており再生数が多いので、ホントにこのエキセントリックな映画が広く観られているのだろうことが見えて驚く。

 あらすじからは昔の定番であるエロコメ映画っぽいし実際そうなのだが、それだけでは説明できない面白さがある。予告編でもわかるとおりのサイケでアヴァンギャルドな異常世界が美術で表現されており、昔でいう『近未来SF』的なSM専用屋敷の造形はそれだけでも観る価値がある。

 見取り図を雨穴に送ったら面白い動画がいくらでも作れそうな異常な家はビジュアルのインパクト抜群だが、そこで行われることも異様で楽しい。セイヤーはフェミニズムの発展が女性の単一生殖で成り立つ世界を作るという妄想に取りつかれ、女性を拷問して"男"という存在の価値を認めさせたいインセルの化身みたいな男だ。女性の権利が向上に、女性が”ものを言う”ようになった際の男の反発、そしてマチズモが崩れていく不安、不能感といったものを体現する皮肉の利いたキャラ。なのだけれど、その描写がいかれている。室内に人工芝をひいて人口岩を置いた狭い部屋のど真ん中で筋トレ。泡風呂からジャンプすると何故か天井から鉄棒がぶらさがっており懸垂、全裸で着地。自分そっくりの人形(毛量多め)とメアリーをセックスさせる。という、マチズモのどうしようもなさを戯画化するそのパワーたるや異常な発想のブラックユーモアは、ブラックユーモアと気づかせる気がないのではないかと思うような珍奇っぷり。

 この映画は一事が万事珍奇で、こんな感じでSMバトルが繰り広げられるが一秒も普通の映画にならない。一秒も普通の映画にならない珍奇なものが面白くないわけがない。

 終盤、男女の関係性が逆転してからの予想がつかないとんでもない展開については、さすがに書くのは野暮だろうと思うので書かない。

 結局、男は射精すると終わりという皮肉なオチになるのだけれど、そこへ導くこの映画の珍奇で異常なエネルギーは観ないことには説明できない。

 

 本当に劇場で観てよかった。変な映画は劇場で観るに限る。