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邦題は酷くレビューサイトの評価も低いが悪くない映画だと思う 映画感想『ウォール 絶体絶命』※ネタバレ

 『ウォール 絶体絶命』を観た。レバノン、フランス合作。ちょっとあまりに今の世の中に重なりすぎるので観るか迷ったが、こういうタイプの映画でかつレビューサイトの評価が低いやつには意外な見どころがあったりするので視聴。配信で鑑賞。

 

 邦題は酷くレビューサイトの評価も低いが悪くない映画だと思う。

 イスラエルヒズボラの間で起きた2006年レバノン侵攻(7月戦争)の24時間停戦下で、イスラエルの攻撃を受けた村が舞台。
 逃げ場のない部屋で、イスラエル軍から隠れる人々を描くワンシチュエーションの映画。ただひたすら隠れて、かといって隠れて凌ぐための創意工夫がエンタメになるタイプでもない。本当にただただ、状況に置かれた人々を観測している。だから退屈するし、停滞感も生まれるのだが、隣国と国内政治組織の戦争に巻き込まれる人たちの日常はこんな感じなのかと想像するとゾッとする。
 また、停滞感が大きくなると訪れる銃声、窓の外に拡がる戦争風景、壊されるインフラ、死体、と戦争が顔を見せる。
 映像面では窓の使い方がいい。暗い部屋の停滞感の中に開かれた窓の外は、美しい風景と戦争が拡がる。この映像的な解放感と悲惨さの同居は目に焼き付くものがある。

 特に最初の窓の風景からのカメラの動き、中盤の牛の死は素晴らしい撮影だと思う。


 いかんせん当地の政治事情をうっすらとしか知らないので、ナチスについてあんまり知らずに関心領域観るみたいな状態で感想を言っている可能性もある。『複雑な関係でどういった思いか明確にできない父親』というモチーフは古い演劇っぽくて、恐らくもう少し政治・歴史を深く知っていればなんの寓意かわかるはずなんだが……この手の映画は批評の補助線が日本語で用意されないので難しい。

 

 この手のレンタル⇒配信と来る、劇場で全然やらなかった映画の御多分に漏れず邦題が酷い。あらすじも含めてこれではスリラーだと思って観てしまう。スリラーだと思って観ると、かなり退屈に思えてしまうだろう。