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主人公が可愛そうでしょうがない 映画感想『サプライズ』※ネタバレ

 映画『サプライズ』を観たので感想を書きます。結末までネタバレあり。

 監督はアダム・ウィンガード。後にアメリカ版デスノートゴジラvsコングを撮ることになる。

 あらすじ

 両親の結婚35周年を祝うために集った子供たちとそのパートナーたち。その夜、一家そろっての夕食の場で、突如放たれたクロスボウの矢が一人の命を奪う。一か八か外へ飛び出したエイミーは仕掛けられたトラップで命を落とし、一家は正体不明の襲撃者によって家に閉じ込められる。家中に潜入していた動物マスクの襲撃者によって次々と命を落とす家族だったが、次男の恋人エリンが中心となって襲撃者へ抵抗を始める。襲撃者の正体、目的、そして家族の誰が生き残ることができるのか。

 という話。

 以降、結末までネタバレ。

 

 家にヤバい人が来ちゃう映画をホームインベージョンムービーというらしい。本作は素敵デザインアニマルマスク殺人鬼集団が一家惨殺を行うスプラッター……かと思いきや、実は三男の恋人エリンが格闘技・ブービートラップ・サバイバルに卓越した殺人マシーンだった! ということがミッドポイントでわかり一気にジャンルが変わる。

 プレッパーの狂った親父に殺人技術を教え込まれたエリンが次々襲撃者を殺していくのは爽快。またエリンが初の実戦っぽくて結構緊張しながら戦っているのがまたいい。

 序盤からパニックになった一家の行動がけっこうバカで、こういうの、実際問題こんな状況におかれたら人間は冷静ではなくなるのでバカな行動を取るのもおかしくないとは思わないけれど、映画だとイライラしちゃうのが不思議だ。観客はパニックになってないからかね。

 真犯人は意外性もなく、きちんとぶっ殺したくなる相手に描かれていたり、殺人描写はしっかり肉が裂け、罠が決まるところはえぐく、ユニークなゴアもある。ジャンルの愛好家がちゃんと作っているなと信頼できる出来で楽しい。

 ラストは恋人が黒幕で、しかもすっげー情けないクズってオチで、そいつを殺すのだけれど、それを警官に目撃されて犯人と誤認されてしまう。そして踏み込んだ警官が罠の犠牲に……となったところでタイトルロゴがでて軽快な音楽が流れて終わり。エンドロールでは現場検証の資料が映されて(エリンの写真には容疑者? と書かれている。あのあと死んだんか)終わる。というオチなのだけれど。

 そんなホラーコメディの流れにされるとモヤっとしてしまうなあと思う。終盤まではそんなホラーコメディとして楽しめたのだけれど。

 なんでかと言えば、主人公のエリンがあまりにかわいそうだからだ。

 幼少期から狂った父にサバイバル技術を仕込まれ、どうにか恋人ができてやっとまともな生活になれると思ったら、殺人事件に巻き込まれた挙句警官殺しになるというオチは、彼女の人生があまりにダメな男たちにめちゃくちゃにされておりこれめっちゃしんどいオチじゃないか、となる。

 要所要所で彼女が恋人を止められなかったり、恋人の母に好かれようと頑張ったりと、彼女が家庭に飢えている様子が見えるのがまた辛い。

 まあそんな因果も皮肉なコメディで、ホラーなんだし嫌なオチでもいいのだけれど、やな話だなー。