ラノベ書きしもの日記

ワナビの日記

虚構も現実もどっちも取っちゃっていいという最高の物語。 『グリッドマンユニバース』感想(ネタバレ)

 映画『グリッドマンユニバース』を観ました。感想を書きます。

 ※結末までのネタバレがあります。未見の方はご注意ください。

 

 

 TRIGGER制作のテレビアニメ『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』に続くシリーズ最新作。かなりバッチリ完結した2作品を続けるのは蛇足なのではと思って不安視していたのだが、いい意味で大いに裏切られた。TOHOシネマズ日比谷にて舞台挨拶付き上映を鑑賞。
 素晴らしかった。本当によかった。たぶん今年のベストだろう。

 

 よかったところはたくさんあるのだが、というか全部よいのだが、まず一番よかったのはテレビ版2作品が余白として語らなかった部分を語っていくという工程が全く野暮でも蛇足でもなかったということだ。

 二作品で語れらなかった大きな余白『青春の数か月を無くした響裕太のその後』『別れを告げられなかった蓬とガウマのその後』についてがこの映画では語られる (アニメ放送終了後のイベントでの朗読劇でちょろっと描かれてはいたが)。物語のメインプロットは前者、響裕太(本物)の物語だ。

 あえて悪しざまに言えば「ヒーローが世界を救うために青春の一部を奪われた少年」である響裕太。「記憶が無いのに好きな女の子との会計が進んでいる」という苦い状況で好意を伝えられずにいる彼の前に新たな怪獣が現れる。そしてそこで彼は、SSSS.GRIDMANの第一話と同じく、自ら危険をおかして敵へと挑む道を選ぶ。ここがまず泣けるよね。ヒーローとは何かについて主演声優の広瀬裕也「誰かがやるじゃなくて自分がやると言える人」と定義していたがまさにそれで、力を失っても響裕太はヒーローなんだなと泣けちゃう。

 事件の真相はといえば、ウルトラマンのハヤタ隊員とは違い、別に合体しなきゃ死ぬってわけでもなかった彼の記憶を奪ったことをグリッドマンが悔いていたことがすべての発端となる。グリッドマンが弱さを見せた時、響裕太はグリッドマンにとってのヒーローになる。ここもまた泣ける。誰かを支えられるものがヒーローであり、それは友人とも呼べる。このド直球の善なるメッセージはまさに特撮のそれで、アクションにどことなく特撮のアニメ化という縛りが外れた感のある本作で、特撮的な部分として残されたところだと思う。話は逸れるけれど、テレビ版第一話時点でグリッドマンは「世界を選ぶか一人を選ぶか」というセカイ系っぽい問いで世界を選んでいるんだね、ヒーローだから。だけどその選択を悔いることになるというのが、ちょっと面白い視点。

 特撮的といえばラスボスが登場したとたんに、それまで間をとって生っぽい芝居を続けてきた世界観が一変して説明セリフを堂々と語るようになる。ここも特撮っぽさだと思う。そこがいい。

 この「響裕太の物語としてのグリッドマンユニバース」が大変素敵で、テレビアニメ版が初主演だった広瀬裕也さんが、五年経って芝居が上手くなっているというのも、グリッドマンが抜けた響裕太という視聴者が実体を知らないキャラという難しい像を立体的にしていると思う。

 

 一方で友情以外に明示されたテーマが「虚構」だろう。セリフでド直球に「人間は虚構を信じることができる唯一の生き物」みたいに言っている。グリッドマンでは虚構である世界に生きるキャラクターたちが創造主を救い、友情を結ぶ。今作はグリッドマンの脳内でつながった、言ってみれば巨大な虚構である世界の中でみんな助け合い、恋をして、友人になる。虚構と現実を二択にする必要はなく、虚構を信じ現実と手を握ればいいという、言っちゃえばおいしいとこどりなんだけれど、いいじゃんそれでという真っすぐさがある。この真っすぐさは「特撮」と「アニメ」いうフィールドが重なって作り上げたパワーなんじゃなかろうか。

 で、さらに最高なのが全キャラ総出演。封印されたアレクシスに、別世界に旅立った新条アカネが実写アニメ両方出てきたり、さらにはガウマの姫まで出てきたりとファンムービーとしても百点満点。

 特によかったのがアカネの実写・アニメどっちも出るところ。アカネは虚構を捨てて大人になった、みたいな寒い、リア充になった大人オタクの説教みたいなことにはなっていない。アカネはちゃんと社会に戻って、新しい友人を作って、だけれど虚構のことも忘れていない。グリッドマンユニバースの外側にも世界はあって、どの宇宙もつながっている。虚構も現実も等価で、どっちだって大切なんだっていうのを、両方のアカネがいる姿からで理解できる。ここが本当にね、よかったね。

 

 恋愛パートについても、ダイナゼノンは最後付き合えてグリッドマンは最後まで好意を伝えるに至らないという部分をフォローしており、ここんところは生っぽい芝居とかわいいキャラデザ、多彩な所作と見事にあまーい恋とその結末を描いている。あのラストの告白からの二人のオチ、最高のラスト。まさかアンチくんが恋路を邪魔し続けていたとはな、そんな形でアンチをするなんて。

 公園で髪を顔に張り付かせた六花の顔が、今年のヒロイン萌えシーン大賞受賞です。おめでとうございます。

 

 ほかにその後を描いて上手くいった作品といえば、まずは何はなくとも劇場版レビュースタァライトがあり、あれも見事だった。「その後」を描いて蛇足にならない作品は、前作を拡張できているので必然的に傑作になると思う。ファンを満足させるに留まらないエネルギーを持っている。古川監督と雨宮監督を追っかけていれば次の十年のアニメも大丈夫そうじゃない?

 

 ちなみに舞台挨拶に人生で初めていったのだが、遅れて入場する観客が多かったり上映後声優陣が来るまでにトイレに行こうとエンドロール開始直後に人がたくさん移動したりと落ち着かない。私は運悪く出入口の真横の席だったので、前を人が横切りまくって集中しきれなかった。劇場でスマホのライトで足元を照らしながら上映中に歩く人とか、初めて見ました。ボイスドラマも欲しいしもう一度観に行こうと思う。

 

 ほかにも脚本でアカネがリアリティない言われてるの笑えたとか、2代目アノシラスのフルアーマーモードとか、ガウマの物語泣けたとか、アレクシスの「ジュワッ」ってアドリブかしらとか、アレクシスのラストあれどっちだと思う? とか、六花の太もも太くなりすぎだろうと思ったらラスボスの太ももまで太いとか、まだ書きたいので、機会があれば続きを書きたい。

 

以上。お読みいただきありがとうございます。